この記事の概要
若年層ひきこもりの方は、しっかりしたサポートがつけば、劇的に変わることができる方が大半です。

若年層ひきこもりのご本人と親御さんは、最初は福祉の利用者として長い生涯を送ることに、
抵抗や迷いがある場合が多いと、感じています。
就労支援事業所(作業所)利用を決められるのは、ほかの道がみつからず、
「それも、道なのかな」と考えなおす。こういう経緯によく接します。

就労支援事業所の利用者から、一般就労や、お子さんが願う働き方に進むこと、
実質の所得を少しずつ得ていく方になることは、
猛烈な努力があたりまえにできるお子さんでなければ、とても難しいことです。

お子さんが「働くこと」の前に、現実、どんなことが必要か。
ひきこもりのお子さんの向き不向きから、また時代の流れから、
有効なステップ、ひとつは学びと進学を検討されることは、
価値があると思います。

若年層ひきこもりの方は、なぜ劇的に変わることができるのか

 若年層ひきこもり(15歳~39歳)の方は、しっかりとしたサポートがつけば、劇的に変わることができる方が大半です。それはなぜか。

20世紀の旧世代の謎の病いに苦しむ患者さんたちに接してきた私は、現代の若年層ひきこもりの方は、「変わることができないほど、重いなにかを負ってしまったわけではない」と考えています。

私はけっして、ひきこもりの方の苦しみ、無念さが、「重くない」とは思っていません。
ひきこもりや、併発する精神疾患、強迫性障がい、発達障がい、長い期間を犠牲にしてしまった彼らの悲しみに心を打たれてきたから、私はいまも、みなさんのサポートを本業としているのです。

ご本人と親御さんの苦しみに接してきた私も、「状態が改善することが多い」「変わるのが早い」ことに驚く

「医療も、専門職の先生がたの訪問も、拒否しているから」
「自室で排泄をして、入浴も歯みがきもしていない。髪は伸び放題だ」
「多くの支援機関に相談し、あらゆる手を尽くしたが、いまも出口がみえない」。

ご本人は社会にたいするひけめや、「もう社会では生きられないのじゃないか」「遅すぎる」「自分では、どうにもできない」と、孤独に苦しんでいる。
お父さん、お母さんは、「せめてご近所に迷惑がかからないように」「子どものことを考えると、外を歩くのもつらい」「各所に支援を求め、自分たちがどんなことをしてでも、子の状態が良くなることだけを考えてきた」「疲れた、と言うこともゆるされない」と、思っておられる。

ひきこもり、外出・社会参画ができなくなる若い方のご家庭は、もともと文化度の高い、礼儀礼節を大切にされる親御さん、お子さんだと、私は感じています。
そんなお子さん・親御さんが、どんなに体裁をなくしても、がんばってこられた。その誠実さ、まじめさも、社会にはあまり知られていないのではないかと思います。

とくに、ご本人の(よい意味で)不器用でならないまじめさは、社会に知られる機会が少なく、誤解をうけることが多いですよね。

深刻化・重症化をきわめたお子さんが、いくつかのよいきっかけが続き、適切なサポートがつくことで、どんどん良くなっていかれる。以前の状態を考えると、こんなに変わったよね、と、私も青年や親御さんと一緒に、ふりかえって喜びます。若い方も、もっと先に進みたいと、私がそれまで、なかなか聴くことができなかった希望を伝えてくれます。

この状態の改善、変わることの早さには、私も驚きます。

「ひきこもりだった自分を、思い出したくない」「絶対にもう、無念なことを繰り返さない」青年の姿をみて

ひきこもりや、自室でのひどい生活、外を楽に歩くことなどできなかった以前の状態を、もう思い起こせないほど、ご自分を伸ばすことができた青年たち。彼らの中には、「ひきこもりだった自分を、思い出したくない」「絶対にもう、あんな状態は繰り返さない」と、過去のご自分とは、はっきり離れたいと考える方もいます。それくらい、別のご自分になるために、必死でのりこえてこられたのだろうと。

作業所利用は、まだ早いのでは、とまず、考えてみてください

障害者者手帳の取得や障害年金受給申請にさいして、抵抗がある、と悩むご家庭は多いですよね。
「福祉制度の利用者になってしまう」のが、本当の道だろうか、と答えが出ない思いで、選択に迷いますね。
「利用できる制度は、適宜、利用する」のは、本当に助かる面があります。

福祉の事業所も、いまは多岐にわたる形態で、設立・運営されるようになりました。
とくに就労移行支援事業所は、いま、全国でも、こちら和歌山でも、就職、就労につながる成果をあげていますね。
福祉の事業所でステップを踏む。それが画期的な変化につながる場合もあります。

ただ、作業所利用にあたっては、「まだ、この道に進むのは、早いのではないか」と、まず考えてみてください。
福祉の作業所利用について、お子さんの将来にどんな可能性が複数、考えられるようになるか。これについては、また改めて、お話しますね。

お子さんは、「中学の卒業証書はもっているが、実質、中学にはあまり行けなかった」
「高校を中退し、通信制高校やフリースクールでも、うまくいかなかった」
など、
どのような経過でいらっしゃいますか。

中学卒で、就ける仕事の選択肢は増えました。努力を続ける、そのサポートがしっかりつけば、
プログラマー、デザイナー、スタイリスト、アパレル、農業、カフェ…
いろんな進路を選べます。

ただ、仕事はどれも、まず体力を酷使(ひどく使う)しますよね。
ひきこもりになるお子さんは、「体力を使い、神経をつかう毎日で、一から自分を鍛え上げていく」ことには向いていない方が多い。

お子さんが20代、30代であれば、進学をめざすことは、いまの時代、不自然なことではありません。
大学全入時代。卒業まで、大学のサポートがしっかり受けることができます。

これまでの社会経験と、いまの状態から、いきなり仕事に就くことは、無理だ。
そのご判断から、大切なステップとして、
作業所・就労支援事業所の利用や、高校、大学への進学を検討してみてください。

高校や大学や専門学校に行けるなら、
そこでお子さんが初めて得られる社会経験、人間関係、コミュニケーション力。大きな価値はあります。

「中退に終わるのではないか」。
中退でも、単位修得が高卒認定や大学編入、資格取得、
また就労
に活かせる場合があります。

大きな学費、費用をかける前に、必要で有効なステップ(段階)をふむことは大切ですね


ただ、「進学したが、ほとんど行けなかったとき」に「どう備えられるか」は、考えましょう。
大きな学費をかける決断の前に、有効なステップ
として、いくつ選択肢が考えられるか。

就労でも、「よいステップをいくつかふむ」ことで、実現できる働き方は大きく変わります。
「この子には、そんなことを考えても、無理だ。あんな重い状態では…」。

若年層ひきこもりの方は、劇的に変わることができる場合が多いのです。
お子さんの「いまの深刻な状態」から、数年先の姿を知ることは、まず無理だと思います。

ご不明な部分がある、またはこの記事に「なにかを感じられた」親御さんは、ぜひ、私とお話してみてください。

私も、昔の自分をふりかえって、「あのとき、よくよく考えることができたら」「もしあの時代に、適切な助言で未来に多くの選択肢があることを、私に気づかせてくれる専門家がいたら」と思います。

無念な人生な、送る必要がないのです。そう思われませんか。

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