このエントリーでは、エーミールが力をいれている、不登校、ひきこもりのお子さん・青年の「進学」で、どんなことが叶うのか。学習や受験の指導で、進学の準備をするだけでなく、「(学校・学生)生活」ができるように、たくさんの準備が要ること。

そして、進学することで得られるものは、専門分野の知識・スキルだけではないことについて、お話します。

先の読めない時代であることを前提に、ご本人の長い将来を考えたとき、どんな働き方を考えたらよいのか。それを親御さんとご本人だけで考えることは、かなりの高度で先進性のある知識・経験が要る。私がご一緒に考える仕事をしていること。

「在宅ワーク」「中間的就労」についても、考えます。
親御さんにぜひ応援していただきたいこと。これも、今日のテーマです。

1外出や生活の「不自由さ」「できない」の助けの活用。親御さんが丸抱えしない

エーミールでサポートをおひきうけしているご家庭には、本当に喜んでいただいています。とくに、ひきこもりの場合、ご本人の多くが心の障がいや疾患をおもちで、親御さんもお子さんと一緒に、お歳をとっていかれます。だから、私に介護職経験があり、介護免許が複数あることで、ほかの国家資格ではまずできない支援ができることを、私自身が強く認識するようになりました。

外出が難しいご本人には、「移動支援」というかたちでの、移動支援の免許をもったヘルパーによる外出支援が利用できます。家の中での生活で、ご本人がままならない部分がある場合や、親御さんが歳をとられ、長年、ご本人を支えてきたご負担で、限界を感じておられる場合は、訪問系の介助サービスをさまざま、利用していただくことができます。

ただ、これも、サービスを利用しやすい地域(都市部)と、サービス利用率が非常に低い、サービス利用にほとんど至っていない地域(地方)とで、大きなちがいがあります。サービスの担い手の力量も、地域により、異なると感じています。会話や人と接すること、外出が苦手なひきこもりの方の支援を得意とするヘルパーが、まだまだ少ない地域(地方)では、都市部のヘルパーのサービス充実度からすると、「格差」ということばでは足りないほど、「別世界」の状況になっていることを、痛感します。私は、ヘルパーサービスでは最先端の京都市から、ヘルパー利用が非常に少なく、ご家族がご本人のことを丸抱えしておられる場合が多い和歌山に移住してきたので。

ヘルパーのサービス導入までに、ご本人がそのようなサービスに慣れることがまず必要です。また、サービスの利用開始までのあいだに、親御さんの支え(介助)のご負担の軽減と、ご本人の生活のたいへんさを楽にしていく工夫を、専門の見地から相談、助言する必要は大きい、とも感じています。

2不登校、ひきこもりからの「進学」で変わること

さて、今日の本題。

当事業所では、義務教育のあと、卒業や中退の「次」に進むことができないまま、期間がたってしまった、あるいはご本人の状態が悪化してしまった、という場合の「進学支援」に力をいれています。それは、「進学」によって叶うことが多い、と、学習や受験対策で教えている側の私も、考えるからです。

行けなかった高校、大学、専門学校などに「進学」して、何が身につけられるのか、その先にどんな目標をもてるのか。具体性のあるご相談を進めるのが、私の相談支援の原則です。

少子化と、大学の数が増えたこと、ほか、子どもの学力低下も関係してくることですが、大学に入学すること自体は、難しいことではなくなっています。ただ、入学してみて、高校、大学、専門学校での「学校/学生生活」にあまりに無理が大きかった、という場合は多いです。大きな集団の中で学ぶ機会の少ない通信制高校でも、学業や学校生活を続けることが無理で、途中で止まってしまった、というお子さんも珍しくありません。

そのため、進学に向けて学習面で準備をするとともに、「学校/学生生活」を実際、どんなふうに叶えていけるか。ご本人の新生活への準備を進めることが、非常に大切です。

同級生、同期の子たちと話せる「話題」に困るお子さんは、「話題を貯める」のも、大切なこと。
興味をもってみると、結構面白い。世の中って、こんなに、いろいろなのか。
話題とともに、「会話、コミュニケーション」が難関となるお子さん、若い方。圧倒数ですね。

学校の座っての授業が過ごせても、体育の「みなでやる競技」や、文化祭、体育祭など「全員参加で」「みんなで協力して」盛り上げる行事が、苦手だ。
大学や専門学校だと、ランチ(お昼)はだれに声をかけて、どう楽しんだらいいのか。
「ハードルが高い」「できるのか」「孤独にひきこもる、元の状態に戻るのではないか」との不安
は、ご家庭のみなさんがもっておられることでしょう。

仮に進学先で、途中で学業、登校が止まってしまった場合も、途中まで単位がとれたら、高卒認定試験を受けるなど、その後の選択肢につながります。

いま、大学でしっかり力をつける、研究することが目的となるよりは、社会でいきなり働くより、前段階を作ることを、どれだけ有意義な経験、「練習」とするか。これをご一緒に考えることが、まず大切です。

「みんなの中でいられる」「ちょっとは楽しい学校・大学生活が、やっと送れた」「みなの中で授業を受けることが、苦しみでなくなった」。
「なにか、進んだ気がする」「なにか、大きかった」。
これらは、社会で働くより前に、経験しておいてほしい。

働くことの過酷さと、そこで何度となく経験する挫折。
働くとは、だれでもそういうことです。
けれど、不登校、ひきこもりのご本人が受けるつらさ、悲しみは、とても重い。

3スキル・知識の基盤となる教養や心の品格、ご本人の育ち

これは、ひきこもりの若い方と出会っておどろくことですが、文化度の高い、上品なご家庭で育っているお子さんが、圧倒数です。
社会では、「文化度が高く、上品である」ために、浮いてしまって、仲良くなれる人が少ない。
この現実もありますね。ほとんど指摘されていないことですが。

先ほどお話した、「同年代の若い人とたのしく話せる『話題を貯める』」。これと、ご自分の育ち、文化を上手に使い分ける。
これは、お子さんにとって、んなに「できないこと」でもない、と私は感じていますよ。

親御さんは、親御さんが高齢になられることが、とても心配だろうと思います。お子さんを、ひとりきり、残してしまうことになるのではないか、と。

お子さんのために精一杯してあげられることを、ご一緒に考えましょう。案外、「精一杯応援してあげたいこと」を親御さんだけで考えるのは、難しい場合は多いのです。

時代の変化は速くなる一方ですし、生き方、働き方の多様化とともに、3年後、5年後の社会がどうなっているかを「読む」ことも難しいのが、いまの時代です。それを前提として、「みんなの中で、つらく苦しい思いをしてきた」「学校や社会から、遠のくほかなかった」ご経験をもつお子さんが、願った方向で、どんなふうに働くことができるだろうか。

親御さんだけで、時代の流れを前提として、これを考える、どうサポートしてあげるとよいかを考える。簡単なことではありませんよね。

4先の読めない時代の「働き方の多様化」「在宅ワーク」「中間的就労」「作業所」

ひきこもりの方の「中間的就労」、つまり、福祉的就労(福祉の事業所での、利用者としての就労)ではつらく、足りないと思うし、一般の就労はまだ無理だ、と思われる方のための「中間的就労」の場、機会を作る必要性は、ずいぶん前からいわれてきました。私も、2011年に非営利団体ユニークネスの代表となったときから、試みてきましたが、それから10年たったいまでは、「働き方の多様化」から道を作るのが、まず有効なことだろうと考えています。

いまの時代、「組織で働くこと」に向いていなくとも、働けるのです。かといって、コロナ禍で急増した「在宅ワーク」が、容易な働き方ではありません。むしろ、高度な技術知識、長時間労働、スピードを保ち、かつ納期に追われる仕事です。外で働くよりも、単価はどんどん下がっています。

「在宅ワーカー」ができるなら、お子さんに「中間的就労」は要らないでしょう。

私も、利益構造を考えながら、みなさんのご希望に添える「中間的就労」を用意していきたいと思いますので、協力、後ろからサポートしていただきたいのは、だれよりも親御さんなのです。お子さんがこの先、何十年もの将来で、無念でない、誇りをもてる働き方ができるよう、親御さんと一緒に、お子さんを応援したい。

福祉的就労は、10年あとの選択でも、遅すぎることはないのではないでしょうか。福祉的就労がつらくて、合わなかった方が、一般の働き方を叶える機会も、増やしたいですね。

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